「今の自分を変えたい」という願いを持っている人は多いようで、書店に行くと、そういった特集を組んでいる雑誌や、自己啓発関連の本や、エッセーが所せましと並べられています。
自分の欠点やイヤなところというのは、誰よりも自分でよくわかっているもの。
「何でこう同じ失敗ばかり繰り返すのかな?」
「自分のイヤなところを変えなくっちゃ」
何かトラブルやイヤなことがあったりして落ち込む度に、いざ!と一念発起します。
でも頑張りすぎて失敗し、また元の木阿弥(もくあみ)。
だけど、自分の生活習慣の中に無い新しいことをひとつやるだけで、
たとえば新聞のいつもは飛ばしている紙面を読んだり、いつもと違うテレビ番組を見る、といったちょっとした「変化」を起こすだけで、大きな<変身>への手がかりをつかむどころか、創造力も磨かれる、と聞いたらいかがでしょう。ちょっと興味を持ちませんか?
小さい頃から「出しっぱなし」「脱ぎっぱなし」「食べっぱなし」が直らず、「ぱなしちゃん」と家庭内で異名を付けられたこともある私が、ある日を境に完璧な整理整頓サイボーグに変身することは不可能です。
それでも人一倍、何とかしたい、変わりたい、とは思ってきました。
私だって散らかった部屋はイヤです。
きちんとした住まいほどキモチのよいものはありません。
だからこそ、
「ようし!今日から<きちんと人間になる!>」
と、何度も宣言してきました。
でも結局、三日坊主に終わる。
「人間、急には変われないのよ。私の<ぱなし>はもう直らないのよ!」
と、開き直ってきました。
人間は一日で変わることはできない。その通り。
みんな知ってること。
私もそう思ってました。
でも、逆説的に言えば、「時間をかければ変われる」っていうことかもしれないんじゃない?という考え方にシフトさせてくれる本に出会いました。
先日、NYタイムスでも紹介されていましたが、M.J.ライアンというアメリカの作家が書いた本で、”This Year I Will…”というもの。
日本語で言うと、「今年の私は…」とか、「今年こそは…」という感じでしょうか。
「今年こそ私はこう変わる!」
いつも新しい年を迎えるたびにそんなことを高らかに宣言して失敗し続けてきた私。
そんな私が最近、ちょっとずつ変わってきました。
最近、というよりは、大きな流れで見ると、数年間かけて、ちょっとずつ変わってきた成果が、やっと目に見える形になっているのではないかと思います。
数年前、家を離れて、独り暮らしを経験しました。
その後ふたたび家族と暮らしました。
家族との同居を再開したとき、相変わらず「だらしない!」と注意されることはあるものの、それでも、
「昔とくらべてだいぶ成長した」
と言われるようになりました。
これは私にとって大きな変化です。
最近、結婚して、家を出て、今まで他人だった人と暮らすようになりました。
その新居を、これまで私の「ぱなし癖」の被害を一番こうむってきた人々、母、姉、妹がたてつづけに訪れ、ぱたぱたと部屋や戸棚を開け閉めして家の中のツアーを終えると、
「すごい、整理整頓されている!」
と驚愕していました。
どれだけ今までだらしなかったのか?!という感じですが(苦笑)。
どうやって変わっていったのか。あるいは変わったのか?その鍵は、
「毎日ちょっとずつ変わる」
ことにあります。
先述の作家、ライアンさんによると、人間の行動には三つのゾーン(区域)があるそうです;
1 comfort 安心・快適ゾーン
2 stretch 緊張ゾーン
3 stress ストレス・ゾーン
私に当てはめてみると、<安心・快適ゾーン>とは、「慣れ親しんだ慣習(?)」である「ぱなし癖」。
「だって楽なんだも~ん」というゾーン。
悪いものも良いものもひっくるめて、言ってみればデフォルトの自分、ですね。
<ストレス・ゾーン>とは「一気に変えよう」とするもの。
「今日からホコリひとつ、髪の毛一本見のがさないキチンと人間になる!」といって、三日坊主で終わってしまった私。
今の自分とまったく違う自分に一朝一夕になろうとしても、それは逆にストレスを負荷してしまうことになる、ということ。
大事なのは2 の<ほどよい緊張ゾーン>。
Stretch、エクササイズで<ストレッチ>をするときは、通常の状態よりも筋肉などを「少しよけいに伸ば」します。
ちょっとだけ無理をする。
すると体によい効果が出る。
私の行動パターンにこれを当てはめてみましょう。
たとえば、大学生の頃までは、
「藍佳は洗面所のシンクの周りをびしゃびしゃに濡らす」とよく怒られていました。
ある日、洗面所の目立たないところに、使わなくなったタオルの切れ端をおいておき、気が付いたときに拭くようにすることにしました。
そうすると、ガンコな水垢もつかないし、シンク周りはいつもピカピカ。
それからは、ちょっとでも汚してしまうと気になって、どうやったら「改善」できるのかを考えるようになります。
うがいをした水をはき出すときに、勢いよくやりすぎるといけないんだ、もっとおしとやかにやればいいんだ、とか、洗顔のときは勢いよくばしゃばしゃ流すと周りが濡れちゃうんだ、とか、今まで自分の「習慣」として無意識にやっていたことに「自覚」できるようになりました。
洗顔に関して言えば、ソープは水の膜でそっと流してあげるくらいの意識でやったほうが、肌を傷つけなくて済むので一石二鳥。
日々の生活で、今までの習慣にはなかった「新しいこと」を何かひとつ始めるだけで、いろいろなことを発見することができました。
自分の行動パターンを見直すことができました。
似たような「小さな変化」を、毎日何かしら見つけるようにしています。
すると、久しぶりに会った家族に
「まるで見違えるようだ」
と思われるくらいの「大きな変化」を招き寄せることができる。
ライアン氏によると、「イノベーション」というのは、何か大きな変化や発見によって急に起こるわけではない、つまり「変革」なんて急に起こそうと思って起こすものではなく、「洗面所の周りを拭くこと」といった、小さな日常に起きる変化の中からこそ、生まれるのだそうです。
<Stretch ストレッチ・ゾーン>。 ちょっと不慣れで、なんかしっくりこないぞ、という感じがする時は、脳がほどよい緊張状態におかれます。
この時、脳内では新しいシナプス(ニューロン間の接合部、神経細胞の神経が他の神経細胞にくっつく部分)が生まれるのだそうです。
リハビリテーションのようなものかもしれません。
小さな事でも、「新しい事」をはじめて、それを「習慣づける」ことが大事。
そうしている内に、あたらしい神経回路が形成され、脳が活性化される、ということ。
脳だけではなく、カラダにも影響があるようで、この「適度な緊張」を自分に課すようにしていると、体重が減る、なんていうリサーチ結果も出ているそうです。
この「三つの行動ゾーン」は<組織>にも当てはまります。
若手社員が何か新しい試みを提案する。
やりはじめて、どうもうまくいかない。
結果が出る前に、上に立つ人間が「うまくいかないじゃないか、元のやり方に戻せ!」と言ってしまえば、少し育ち初めていたかもしれない「変化の芽」が摘み取られてしまいます。
最初はうまくいかないかもしれない、でもそれは当然です。
なぜならそれは「新しいこと」だから。
その「うまくいかない感じ」こそ、「ちょっとした緊張状態」を職場に生み、「イノベーション」や「創造力」の源泉となる。
小さな新しいこと。
ライアン氏は、この「ストレッチ・ゾーン」での<変化>をKaizenと呼んでいます。
<大きな変革>のためにはまず日々の<改善(kaizen)>から、という日本人の考え方から学ぶべきだ、という彼女の主張は、日本人としてちょっと嬉しい感じがします。
それは、何でもいいそうです。
肩に力を入れる必要はありません。
たとえば私は、メークに使うアイライナーを毎朝変えるようにしています。
それぞれ色や質感が違うので、アイメークベースや、アイシャドウの色も合わせて変えなければいけません。
顔全体の雰囲気にも変化が出るから、来てゆく服のコーディネートや、アクセサリーも変わってくる。
あるいは、起床する時間を変えてみてもいいですよね。
あと、毎日何かしら新しい料理に挑戦するようにしています。
別に、一流シェフもびっくりな創作料理を作る必要はないんです。
味付けを変えたり、新しい食材を使ったり。
昨日はアマランスという南米原産の雑穀をゴボウと一緒にキンピラにしてみました。
すると、アマランスは粒が小さいので目の粗いザルだと流れてしまったり、フライパンの温度が高くなると色々なところにプチプチと飛んでいってしまうので、手早く調理しないといけないとか、色々発見がありました。
こういうことがKaizenなのかもしれません。
大事なのは、「クセ」や「習慣」からちょっとでも抜け出ること。
最初はそろ~りそろ~りでも、ほんの少し負荷をかけてあげるだけで、色んな事により「気づく」ことができる意識状態を保つことができる。
心に「遊び」や「ゆとり」が生まれる、よりクリエイティブな人になれる、そう考えて、今日これから、いつもは買わない女性誌を手にしたり、いつもとは違う地下鉄の出口を目指したり、何かひとつ、新しいことをしてみてはいかがでしょうか?

