週末に神宮外苑を車で通ったとき、銀杏並木(黄色い銀杏の葉は、東京の秋の風物詩です)がまだ色づいていないので、これだけ寒いのにおかしいね〜、と家族で言っていたのですが、どうやらあまり急激に寒くなってしまったので、銀杏の木が気温の変化に追いついていないらしいんです。
気温や湿度に合わせ、生き物は枯れたり、冬眠したりして自分を守ろうとします。
人間も一緒です。
カラダが季節に追いつけなくて、体調をくずしたり、お肌が荒れる。
カラダが繊細になっている分、内側からも外側からも、与えられる栄養によってお肌のコンディションの変化がとてもわかりやすい時期。
味覚の秋、と言いますが、秋から冬にかけて旬とされる食材は、ただおいしいだけでなく、その時期に人間のカラダが必要としている養分がたくさん含まれています。
魚介類の鍋などをいただきますと、コラーゲンがたくさん摂取できて、乾燥しがちなお肌に活力を与えてくれます。
私は夏の終わりに、体調を少し崩し、それ以来、肌の状態も、カラダ全体も、なんとなく調子の悪い状態がつづいていました。
肌の皮脂バランスが崩れ、オトナニキビができるのに乾燥している、という混合肌の度合いが強くなってしまいました。
これはいけないと思い、食べ物に気を遣うようにしました。
お魚とお野菜をあたたかく頂いて体をあたためながらキレイにする、ということにポイントをおきました。
お肌ケアも、洗顔したあとの状態をみてその後のステップを考えるようにしました。
たとえば、お仕事でしっかりメイクを長時間していた場合。
毛穴にメイクや皮脂がつまっている感じがするときは、メイクを落とすときもスチーマーをあてて毛穴を開かせながら落とす。
お風呂にもゆっくりつかってマッサージをしながら洗顔する。
そのあとは毛穴収斂効果のある化粧水でパッティングする。
でも、あんまり肌が「まっさら」な状態だと化粧水すら素直に入ってくれないことがあります。
そういうときは、美容液やジェルなどの「やわらかい」質感のものを手のひらであたためながら、顔を包み込むようにしてなじませます。
そのあと乳液にするのか、クリームにするのかは、肌の乾燥度によって決めます。
すると、一週間たったらだいぶ変化が出て、オトナニキビもすっと引っ込み、乾燥も改善されてきました。
季節が変わると同時に色々なものが変わります。
レストランですすめられる飲みもの、お料理、お洋服。
でも、街を歩いていると「絶対変わらない」をウリにする広告もよく目にしますよね。
「絶対落ちないマスカラ」や、「一日中肌がキレイに見えるファンデ」といったうたい文句。
高層ビルなどの建物も、どれだけ長く「変わらず」残り続けるかが大事にされます。
化粧品にしても建築材料にしても新しい素材が日々開発されてゆきますが、どれも「色あせない」「すれない」「よれない」といった「変わらない永続性」をウリにしているようです。
もちろん、地震が起きようが竜巻に襲われようが、建物がしっかりと建ちつづけていることは大事です。
ですが、現代社会は「かわらない」「不変である」、つまりpermanentであることに重きをおきすぎているように思いませんか?
最近、賞味期限の改ざんに関するニュースがつづいています。
そういったニュースを耳にする度に思うことですが、本来「新鮮さ」が何よりのウリであるはずの日本料理や和菓子を大量生産し採算を取ろうとすること自体に無理があったのではないでしょうか。
日本料理のよさというのは、季節の「うつろい」に合わせてお料理をお出しすることだと思うのです。
先日、美食ガイドの最高峰、ミシェラン・ガイドの東京版が出版されるということで「かんだ」という日本料理のお店に取材にうかがいました。
取材中は、星がつけられるのかどうか、ついたとしても幾つつくのかがまったくわからないという状態だったのですが、蓋を開けてみるとなんと三つ星!
たまたま取材をしたお店が三つ星を取ったというのは、取材をした側としても非常にラッキーでしたが、振り返ってみると、主人の神田さんの食への考え方など、世界の一流シェフの中に名前を連ねる資格は十分お持ちだなと思わせるものがありました。
取材でいただいたのが海老と百合根のしんじょのお椀。
さぞや蓋をあけて汁が口の中に入った途端にリッチな味が広がるかと思いきや、一口目は意外にも「あっさり」としていました。
「あっさり」と言うのもどうも気が引けるような気がしましたが、正直に申しあげると、
「一口目はそうなんです。でも、コンソメスープのように一口目からガツンと味が来るものと違って、日本料理のお椀のよさというのは、段々と味が蓄積されてゆく<知的>な所にあります。最初はあっさり。でも海老をいただいて、百合根の濃さが加わって、お野菜と、具と、おつゆを交互に口にいれて、全部いただいてお椀をおいたときに、初めてそのお椀の味の全体像を理解できる、そういう料理なんです」と言われました。
なるほど、お椀をいただいているうちに、どんどんと味が変わってゆくのがわかりました。
同時に、体もあたたまってきますから、なんとなく火照ってくる内に、口の中で体験される味も変わります。
お料理の「感じ方」が変わってゆくのです。
フランスの「三つ星レストラン」と言いますと、いわゆる「グランド・メゾン」です。
文字通り「大きな家」という意味。
つまり、かつての貴族の邸宅などを使って、たくさんのギャルソンがいて、厨房とお客様のテーブルの距離がだいぶあるような、そういうレストラン。
先ほど出てきた英語のpermanentは、「永遠に変わらない、永続して残りつづける」という意味です。
実はこのことば、「邸宅」と関係があります。
Permanentはper=「一貫して」と、ギリシャ語のmanere=「残る」に分解できます。
このmanereからmansionemというラテン語ができました。
Mansionem、現代日本人にもなじみのある「マンション」のこと。
Mansionはもともと、「領主の主たる館」という意味です。
つまり、大理石などの石でできたどっしりとした邸宅で、王侯貴族の権力の偉大さを証明するために、まさに「永遠に存在しつづける」象徴である建物が「マンション」。
そして今の日本では、「現代技術」の「信頼性」と「永続性」の象徴が「マンション」なのかもしれません。
『三匹の子豚』という西洋の童話があります。
このお話では、草で家をつくった子豚はぐぅたらで、木で家を造った子豚も手抜きをしていて、どんな災害がきてもがっしりとしている石の家を造った子豚が一番偉い、ということになっていました。
このお話でゆくと、茅葺きの家を造る日本人はダメ、ということになってしまいます。
でも、それは西洋の価値観です。
草と木、自然界とコミュニケーションを取りながら、空気を家の中に取り込みながら生活をしてきた日本人にとっては、「永久に変わらないグラン・メゾン」で食べられるお料理とはまた違った「三つ星」の基準があるはずです。
空調で湿度と温度が完全に管理された密閉空間であるオフィスやマンションで過ごす時間がどんどん長くなっている日本人女性。
でも確実に季節は移り変わってゆきます。
美しい肌を保つためには、季節に対して敏感でなくてはいけません。
どんなに空気が乾いていても、どんなに年を取っても、どんなに寝不足でも、「絶対変わらない」肌コンディションを保ってくれる魔法のクリームを求めても、それは幸せの青い鳥みたいなもので、どんなに探しても決して見つからないのではないでしょうか。
季節が変わるとともに、お洋服の色合いも変わります。メイクに遣う色のトーンも変わります。
同時に「肌」も変化している。夏肌、秋肌、冬肌と。
コンディションが崩れるのは、「そろそろお手入れの方法を変えてちょうだいね」というお肌からの黄色信号。
「変わらないもの」をひたすら崇拝するのをそろそろやめて、町中で目に付いた街路樹のコンディションや、電車を待つときに吐く息の白さ、一日を終えたときの自分の心の空模様をじっと見つめることで、今の貴女にとってベストなお手入れが見つかるはずです。

