気づかれない「セクシー」の秘密をペッパー・デニスに探る

「七尾さん、メークとか衣裳はどうされるんですか?」と聞かれることがあります。
基本的には「自前」です。
スタジオに入る場合は、ヘアセットだけはメークの方にやっていただきますが、大抵は外で仕事をしているのでほぼ自分でやりますね。
スタジオに出演される方も、メークは自分でやるという方が多いです。
私が生放送で出演するのは、大きな事件が発生した時、現場からの生中継になるので、メークどころの騒ぎではありません。

まず第一報が届き、「うわ!大事件だ!」ということで現場になるべく早く着くようにドタバタです。
現場に着いたら着いたで、あちこち走り回って、目撃者や関係者のコメントを取るべくガンバります。
夜8時、9時くらいにはいわゆる「取材」は終わることが常ですが、たとえば「立てこもり」などの現在進行中の事件は取材が終わることはありません。
そのまま生中継まで突入です。
直前に記者会見が開かれたりすると、もう本番ギリギリまで会見場にいて情報をゲットして、飛び出して中継にのぞむこともあります。

ただ!やっぱり女の子ですので、私は本番中継前のどこかの段階で「化粧直し」を怠りたくありません。
一度、警察の会見会場で、広報担当の副署長を待っている間に化粧直しをしていたことがあります。
かなり周りの記者から浮いていたかもしれませんが、それでも屋外で長時間過ごしてお化粧もドロドロの状態を画面にさらすワケにはいきません。
私の顔をテレビで見て「気分悪くなった」なんてことがあったら大変です!
ただ、記者会見の時は、やっぱり「ここでするのはかなりヒンシュクかな…?」と反省し、警察署の階段の上の方、あまり人が通らないところに座って化粧直しをしました。

そんな私が最近ハマっているのが『恋するアンカーウーマン』というアメリカのドラマ。
「アンカー」(スタジオに座ってニュース番組を仕切る人。日本でいう「メインキャスター」ですね)を目指し、ペッパー・デニスという容姿端麗、頭脳明晰なニュース・リポーターが毎回大活躍する、という設定。
だけどこのペッパー・デニス、たしかに優秀で特ダネもたくさん生むけれど、気が強すぎていつも空回りばかりしています。
でも、その姿が女子の共感を呼ぶんです。
ペッパーが失敗を重ね、「どうして私はダメなの?!こんなに頑張ってるのに!」と叫び続ける姿を見ると、「そうだよね〜、頑張りたいのに空回りしちゃうよね、でも本当はいい仕事がしたいってだけなのにみんな分かってくれないのよ〜!」と、いつの間にか自分を慰めている私がいます…(苦笑)。

彼女のファッションがまたゴージャス。
ヒールは常にかなり高いです(ちなみに私は基本的にはローヒール。やっぱり現実にハイヒールは現場では無理ですね)。
マノロ・ブラニクとか、その辺りのブランドを履きまくっています。
スーツはDolce and GabbanaやVersace。
イタリアン・ブランドのスーツ・ジャケットはカットがとにかくかっこいい。
ペッパーを演じるレベッカ・ロミジンさんは、元スーパーモデルなので長身、と〜ってもグラマラスな体型で、肩は結構がっしりとしていて、全体として「デカい!」という印象を与える美女。
そのがっしりとした肩だからこそ、ジャストサイズのイタリアン・ジャケットを羽織るとものすご〜くかっこいい!

日本で「報道」という看板を背負っていると、ちょっとネイルの色やアクセサリーが派手なだけで、視聴者から苦情が来たりすることがあるので、気を付けないといけないのですが、アメリカはその辺りが結構大らかなようで、ペッパーのファッションは実にカラフル。
もちろん黒のパンツ・スーツでびしっと決めることもありますが、明るい色の、体の線がくっきりと出て、しかも襟ぐりが大胆に開いているトップスを着たりもします。
時にはタイトなスカートにハイヒールで、走る、走る!汚職のネタをつかんだ政治家への「アタック」では、果敢にも政治家が乗った高級車のドアにマイクを突っ込み、何とかコメントを取ろうとしますが、なんと車はペッパーを振り切るために走り出してしまい、ペッパーはマイクごと引きずられてしまいます!
最後はあろうことか道路脇の水たまりの中に置き去り…。あぁDolce and Gabbana…。

普通、そんないかにも高そうで派手な服着て「張り込み」(容疑者などの姿を撮影するために自宅の外などで待ち伏せすることですね)なんてしないだろ〜!というつっこみを入れたくなりますが、全身100万円は下らないと思われる洋服が汚れるのもお構いなし!と、スクープめがけて爆進するペッパーの姿は爽快で癖になります。
いつ見ても完璧なヘアセット、メーク、そしてファッション。
なのに!「女っ気」ゼロ。
女っぽさでは売ってないのに、誰よりもセクシー。
自分が持っている素材を活かしてないわけではない。
でもこれみよがしではない。
確かに露出度は意外に高かったりするのに、でもイヤらしい感じが全くしない。これってどういうこと?!って考えこんじゃいます。

この「ペッパー・デニスの謎」を解く鍵は、ハリウッドでのアカデミー賞取材時に出会った多くのレポーター(アメリカでは記者のことを「レポーター」といいます、つまり「リポート(報告)する人」、ということですね)にあるように思います。
ABCやCBSの、世界的に顔が売れていて、スタジオから「アンカー」としてニュースを伝えることもある人達が自ら取材していて、きらびやかなファッションに身を包み、メークもばっちりなんだけど、中継時間まではカメラマンと音声マンと二人三脚で走り回って、額に汗を浮かべて「コメント録り」(関係者などのコメントを収録すること。中継の中にインサートされるVTRので「取材しました」という感じで使われる)をしている。
でも、いざ生中継、本番です!ってときには、さっきまでの泥臭い姿が同一人物とは思えないほど涼しげな姿で、タキシードのポケットに手を突っ込み、悠然とインタビューをし、最新情報を世界中に向けて報告しています。

「テレビ・ジャーナリズム」が誕生した国、アメリカ合衆国のトップのレベルの高さを思い知らされました。
つまり、彼らには「実力」があるから、きらびやかな外見を素通りして彼らの「コトバ」に耳を傾けたくなる。
彼らが「伝えよう」としている話しがどんな話しなのか、彼らの「ワザ」によってついつい聞きたい気持ちにさせられる。
でも、ふと客観的に見てみると、彼らは外見や、表情、手の動きなどにものすごく気を遣っていることがわかる。つまり、完全武装しているんです。
表面的なところにも細心の注意を払っているのに、それが悪目立ちすることなく、アイシャドウの色から「瞬き」一つに到るまで、自分が「信頼できて、好感を持てる優秀なリポーター」であると視聴者に思わせるために働くよう計算されているような気がします。
それくらい、実際に彼らが「リポート」しているところを「生」で目にすると圧倒されます。

場違いなファッションや、カメラマンなどの足手まといになってしまうヒールの高さはもちろん避けるよう気を付けたいと思っています。
ただ、どんな現場でも常に「女らしさ」を保てるように、保つどころか、いかんなく発揮してやる!ぐらいの気合で(笑)いくべきである!と『ペッパー・デニス 恋するアンカーウーマン』のDVDを見ながら強く思う今日この頃であります。(ただ、そのDVDを見る姿はパジャマでソファに横になりながらタイムセールで買った御菓子をつまんでいる…というまさに「干物女」そのものなんですけどね…)。


posted: blooming date: June 25, 2007 5:56 PM