「ジャーナリズムとファッションnumero 1」

ご無沙汰しております、日々取材でいろんなところに飛んでいる七尾です。

二回に渡って「ジャーナリズムとファッション」のお話をしたいと思います。
というと大上段に構えているような感じですが、初回はごくごく日常的なこと。
私の肩書は「ジャーナリスト」となっていますが、そんな肩書を自ら名乗るのはおこがましい、まだまだ「卵」です。
現場ではわからないこと、できないことだらけで、足手まといにならないようにするのが精一杯。
でもできることはなるべくやっていこうと思っています。

今まではFMラジオの報道番組の「パーソナリティ」だったので、ずっとスタジオの中にいました。ある程度の経験も積み、何年も同じ番組をやったので、スタッフの中で番組の構成を一番よく知っているのは私になっちゃって、結果的に全部自分が何とかしなくちゃ、って感じだったんですね。
私がやらないと回らない、みたいに自分で抱えこんでしまう状況。でもそうすると色々負担が多くなってくる。
番組のクオリティーを保つためにスタッフに厳しいことも言わなくちゃいけなくなったり。まだ若いのに孤独と戦っている…みたいなのって、笑えないですよ〜。ストレスでお肌がさがさになったり体調くずしたり…。

そんなところから、飛び込んだ報道の現場では新卒のぺーぺー。
右も左もわからず、まったくもって役立たず。
先輩に教えていただいたり、のろのろしたり、要領を得ない質問を緊迫した現場のインタビューなのにしてしまい「何やってんだ〜!」と叱られる。
でもそれが嬉しくってたまらないんですよね(別にマゾではありません)。というのも、自分が知らないことも、学ぶべきこともたくさんあって、周りは自分より仕事ができる人ばかりな状況ってすごく刺激になるんですよ。
否応なしに向上心が湧いてきます。今まではぶあつい壁で守られたスタジオの中で、椅子に座って、情報を「さばく」作業。それはそれで重要な仕事。

でも『踊る大捜査線』じゃないけど、やっぱり「事件は現場で動いている」んですよ。瞬時の判断でスクープを他社に取られてしまうかもしれない。
予約の電話が一分遅かっただけで現場に向かう飛行機が取れない、取材の時間が無くなってしまう、なんてことが起こりかねない。
そんな環境で、私は小さい時から自分が「どんくさい」子だったことを久しぶりに思いだしました(笑)。運動神経も悪いし。
求められるのは、行動力、判断力、体力、そして瞬発力。どれも元々苦手意識が高いものばかり(笑えない…)。当然のことながら、「私やばい、仕事できないヤツになってる!」という危機感ばりばりです。
でもそれが嬉しくてたまらない。
守られた場所で言葉を駆使することはできても、動いているところで瞬間的に短くその場を表現するということが全くできない自分。現場での言葉は「頭」よりも「体」から出てくるもの。

そんな中、服装もがらりと変化。スーツ、スーツ、スーツ!です。

最初はよくわからなくって、スーツと言えばTheoryだろうと思い、アウトレットなどにいって揃えました。で、スーツのインナーと言えばシャツだと思っていたんですが、それが意外に現場では動きにくい。汗もかくし、いちいちクリーニングに持っていくのも大変だしお金もかかるし…みんなどうしてるわけ?!とちょっと悩んだところ、周りを観察してみると「スーツに合うインナー」をみなさん着ているではないか!なるほど、カットソーみたいのでいい訳ね!と目から鱗。
いろいろ見てみると、Untitledなどでは最近のぴったりとしたコンパクトな仕立てのスーツの中に着てもシルエットにひびかないさらっとした感触の薄手のニットや、かちっとして見えるVネックのTシャツなどをおいている。つるっとした素材のLycraとか、ポリエステル配合のTシャツって何度洗っても毛羽立ちもないし、白っぽくもならないし、体にフィットするんだけど、しすぎないからちょっとお腹が気になっても(笑)大丈夫だと思いませんか?!…なんだか一人で盛り上がっていますけど、そんな発見が多くって楽しいです。

さらなる問題はスーツ自体。

たとえばTheoryは大好きだけど、決して安いモノではない。
大雨取材でずぶ濡れになった経験から、汚れることが予測される現場に行くときに着るスーツを何着が揃えてゆく必要性に気がつきました。
そこで、最近雑誌を見ていて気になっていたThe Suit Companyの女性ブランドSheをチェックしてきました。
結論:かなり使える!というのも、サイズもカットも豊富で、どれか一つは自分が理想とする形が見つかるんです。あと、インナーも充実。しかも「安っ!」。
これは「安カワ」ならぬ「安かち(かっちりの意味)」!1500円位で、かなりいいものがある!毎日着るものだし、安くてモノがよくて、デザインも色もオッケーだったら何の問題もありません。
バッグやアクセサリー、時計といった小物でラグジュアリーなものを身につけると、全体的に高級感も出るし。姉に上下三万円の新品を着て会ったら、「そのスーツかわいい!BOSCH?」と聞かれましたよ。カットも結構いいんです。
今までは、セレクトショップなどで購入したデザインに凝った洋服も多かった私のワードローブの幅は、「記者」という役割、そして「報道」という世界でものすごーく狭くなりました。悲しい現場に突然いかなくてはいけないこともあるわけで、基本的には黒を基調として落ち着いた色合いのものを着る。
でもその狭い幅の中で自分なりにいろいろ工夫することができますよね。このコラムをお読みいただいている方には「今更何いってるの〜」ということに驚くことが多くって、逆に教えていただきたい状況…。

でも、「スーツ」っていいですよね。
ジャケットを羽織って街を歩くと、「働いてるなぁ…」って感じがしてプチうれしくなりませんか?
長い一日を終えて帰宅すると、どんなに疲れて眠くっても、ジャケットとパンツをブラッシングして、襟周りなどをちょっと濡らした布で拭いてあげて、「今日はキミも一緒によくがんばったの〜」とまるでペットを愛でるような気持ちで手入れする。
そしてハンガーにかけて一晩陰干ししてあげます。そうすると、「一日が終わった」とほっとしてお風呂に入ることができる。

今回のお話は、具体的なことになりましたが、次回は「ジャーナリズムとファッション numero 2」と題して、いかに歴史的にファッションとジャーナリズムの関係が深いのか、ということについて書こうと思っています。
ハリウッド黄金時代の名作にジャーナリストが多く登場することには、実は訳があるんです。『ローマの休日』でグレゴリー・ペック演じる主人公ブラドリーも新聞記者ですよね。
スクープを狙って近づいたアン王女と恋に落ちてしまう。
ジャン=ポール・ベルモンドもハンフリー・ボガードもケイリー・グラントもキャサリン・ヘップバーンもみんな新聞記者の役を数多く演じてきました。トレンチコートに身を包み、記者手帳を手に。次回はその裏側に迫ります!


posted: blooming date: October 25, 2006 7:14 PM